「ダンスがみたい!5」参加公演
カホウダブルスダンスタインスタ 『Happy together 〜 Water』



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写真:田中亜紀
作/ ダンス 神蔵香芳
映像/美術 カンゾウカホ
照明 坂本明浩
音響 川崎克己
協力 スーパーフローティングスタジオ

自分を形づくっているものは何だろう。さっき食べたパンとコーヒー。出会った人との会話。アスファルトの照り返し。風が髪をなびかせたこと。聞こえてきた音楽。この空の色。別れたこと。信じたこと。バラバラでとりとめがない。動いてみる。踊ってみる。しだいに見えてきた、はっきりと、ただひとつの、

2003年9月2日(火)3日(水)19:30開演  (3日は終演後アフタートークあり)
会場 神楽坂die pratze(新宿区西五軒町2-12)
(MAP)


[吉悠樹彦(舞踊評論家)
Picnic「ダンスがみたい!5レポート」(die pratze発行)より転載]

カホウダブルスダンスタインスタ「Happy together〜Water」

神蔵香芳は職業ダンサーというより、多ジャンルで活躍する側面を持つ独特のアーティストとして考えることが出来る。繊細で理知的な感覚を持つこの作家は人々を好きにさせる力を持っている印象的な存在だ。子供の頃ダンスを学んでいたが、ダンスのみに満ち足りず、独学でいろいろな表現を学び吸収をする。例えば、ぬいぐるみ作り作家としては写真集「うさぎびより」(角川書店)を出版するに至っている。舞台で使用をしているヴィデオや装置も独学で学んだものだ。故に生み出すダンスも身体表現のみに特化されたものでもなく、周囲の映像や演出と融和し、一定のトーンを持つように感じる。靴を脱いだ女が「生活の中で一番大切なのは猫」と靴に向かって話しかける。靴の擬人化の中、暗い中情景が始まる。夢と現実、焦燥感、強迫観念、といった事柄が、ダンス表現のみならず、間接話法のように語られる。骨組みとしてインスタレーション、ヴィデオが存在し、一定のトーンがある中、踊りが浮き出すことなく存在する。釣り下げられたコップを用いたパフォーマンスが行われ、日常的な家の風景を描いたヴィデオダンスの中、踊りが展開。ゆっくり、作家が触れる事からコップから時に早く水が流れさり、情景が消えていく。作品としてのスタイルはマルチメディアを駆使する若手の作品群と共鳴するものが多いかもしれないが、前述のように、そのスタイルなど持つべきものはもっている作家であり、オリジナルな存在だ。出会う事が出来て嬉しいアーティストの1人だ。

(9月3日神楽坂die pratze)



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